神奈川県出身。カリフォルニア州サンタバーバラ校映画科卒業。2005年に商業映画デビュー。2013年、雑誌『pen』3/1号にて、ショートフィルム界8人の気鋭の監督の一人として紹介される。
[主な作品]
『猿芝居』(2016年映画で日本を元気にするプロジェクト、串間保ほか)
『未来のカケラ』(2016年内閣府復興庁主催事業、須賀健太ほか)
『愛のレシピ~卵ランド~』(2015年劇場公開、和泉妃夏)
『死神失格』(2013年、田中要次・なだぎ武・中越典子ほか)
『VEIN-静脈-』(2011年劇場公開、岡本芳一)
『ゆっきーな』(2010年、木下優樹菜、亀石征一郎)など。
多くの監督がきっとそうであるように、自分も撮影中の「その時にしか生まれないもの」という「奇跡」みたいなものをいつも求めています。自分がコントロールできない要素に魅力を感じると共に、それこそがそこにいる人たちとひとつの映画を作っているという意味だと思うからです。
香瑠鼓さんとあぴラッキーの表現は「その時にしか生まれないもの」で溢れています。
それは、即興を多く含むから、という単純な理由ではなくて、「人と比べず自由に表現すること」をモットーにしている香瑠鼓さんが、「バラバラでありながら、ひとつ」ということを引き出しているからだと思います。
あぴラッキーのメンバーは、それぞれが勝手に表現しているようで実は同時に誰もがそこにいる他のメンバーを気遣って共に存在しています。ぶつからないように、とか、そういうことではなく、支え合っているのです。
それぞれが「命の輝き」を放ちながら、「ひとつ」になっている。
そこに自分は最も美しさを感じました。
お客さんからお題をいただいて即興表現する舞台版「踊る!ホラーレストラン」を観て、これを映画化するというお話をいただいた時、ストーリーは何もないこの素晴らしいエンターテイメントを、どう映画にしようか不安でしたが、香瑠鼓さんが大事にしているコンセプトを聞いたり、あぴラッキーのメンバーとふれ合ううちに自然と物語はできていきました。
「ふわふわ」「さらさら」と口に出しながら動こうとするだけで「通常の回路とは違う回路で細胞に働きかける」“擬態語”はまさに映画のキーコンセプトとなりました。
自分は「障がい者」「健常者」という言葉が嫌いです。敢えてその言葉を使うなら、他の人にできることができない、そんなことが自分にも多々あり、自分のことを「名前の付いていない障がい者」だと思っているからです。
「健常者」なんていないと思っているからです。
だからこの映画では、誰もが当たり前に共存できる世界を目指しました。
「バラバラでありながら、ひとつ」
ただ、「あなたと私は違う」ことに喜びを感じ、感謝し、共に生きていく、そんな願いを込めた作品です。
原田大二郎さんはじめ素晴らしい出演者の方々、関わったスタッフ、支援者の方々、ほとんどが「想い」で集まった方たちばかりです。その全ての方たちの想いと自分の想いとを一度ごちゃ混ぜにして、そこから最上級のエキスだけを抽出したわけではなく、そのまま掬い上げた”ごった煮”のような映画です。だからハチャメチャです。
そのハチャメチャの中でしか見られない個性ある「命の輝き」の数々を感じていただけたら幸いです。
(渡邊 世紀)